【本】なぜ新耐震住宅は倒れたか

家づくりのお勉強

家づくりで気にしたポイントの一つが耐震性能。
日本に住んでいる以上、地震とは一生付き合っていかなければならない。家を建てるなら誰もが耐震については気にするはずだ。

2016年の熊本県地震のニュースなどを見ていると家が傾いり1階が潰れてしまった住宅が多くあったようだ。関連の書籍について調べていると一冊の本を見つけ、気になったので購入してみた。

なぜ、新耐震住宅は倒れたか

この本では『新耐震基準』で建てられたにも関わらず、熊本地震の際に倒壊した住宅の原因調査と考察実験をまとめた内容になっている。

新耐震基準と聞くと新しく感じるかもしれないが、阪神大震災の後に策定された基準で、さらにそのあと2000年基準というものがあるようだ。

詳しくはこちらを参照されたし。

もちろん後発の基準ほど厳しくなり、その基準で建てた家は耐震性能は向上している。

この本で課題として問題提起されているのは、耐震基準に沿って作られた家であるにもかかわら、倒壊や半壊が発生しているという事実である。

耐力壁、直下率という考え方

倒壊した住宅のほとんどが2階の重みに耐えられず、1階部分が潰れるように壊れている。
この1階が潰れてしまうことに関係しているのが、本の中で頻繁に登場する耐力壁や直下率という言葉。ここで簡単に説明をしておく。

■耐力壁(たいりょくへき)
耐力壁とは構造を支える壁面のこと。
軸組構造であれば筋交い、2×4構造であればパネルそのものが耐力壁に相当する。

柱は上からの力には強いが横からの力には弱い。なので地震などの横揺れから家を守るためには丈夫な耐力壁をバランス良く配置することが重要になる。

■直下率
直下率とは柱と壁の位置が1階と2階(上下階)でどれだけ揃ってるのか?という割合を示したもの。
柱直下率と壁直下率がありどちらもただ多ければ良いわけではなく、そのバランスが大切とのこと。

なぜ、新耐震住宅は倒れたか』の中で総合的に地震の被害を検証しているが、倒壊した多くの住宅で壁体力の不足や直下率が低いことが原因と結論付けられている。

施工不良

熊本地震の現地調査では金物の選定や固定方法が不適切であったり、梁や筋交いの入れ方が不適切なものが見つかった。

どれだけしっかりと設計されていたとしても、施工の品質が保たれていなければ設計通りの家には仕上がらない。

家づくりの大事なポイントとして、どんな家を作るかだけではなく、どのように作るかも重要だと感じた。

開口部の注意点

開口が多いと強度が下がる。南側からの日射を意識して南面を窓だらけにすると、設計次第ではあるが耐力壁が設置できなくなり、南面の耐震性が極端に低下する。

日当たり重視の施主の要望だけでなく、それに合わせたデメリットも説明してくれる設計者や工務店だと安心ができる。なんでもイエスマンな工務店はそのようなリスクがあるので、しっかりと注意すべきところは指摘をしてほしい。

熊本地震は何度も大型の地震が繰り返された。

複数回の地震に対して耐えて命を守るのは絶対条件で、さらに破損、倒壊による経済的な損失が発生しないことも家づくりの大事なポイント。

絶対は無いということ。まずは過去の歴史や耐震基準の変遷、阪神大震災、熊本県地震について知ること。最低限の耐震性能を確保しつつ絶対安心は無いということとを理解し、その上で自分が納得できる家を建てること。絶対安全はあり得ない。

大手ハウスメーカーの場合

私達が家を建てるにあたり検討したのは一条工務店とヘーベルハウスだけだが、この2社については本の中では書かれていることは問題が無いかなと個人的には感じた。

一条工務店

一条工務店は本社が静岡(浜松)のため東海地震などに対する問題意識が非常に強く、設計にその思想が反映されていると感じた。2×6のパネルで支える構造のためガッチリした強固な家を作りやい。

一条工務店のi-Tabなどで確認できる間取りを何軒も確認したが、1階と2階の壁、柱の直下率を意識した設計がされていることが確認できた。

工場である程度組み立てることから品質のばらつきが少ないことも良いポイント。

熊本地震で倒壊した家の中には金物の使い方や筋交いの入れ方が良くなかったものがあったようだ。設計と施工は両方が確実に施工されて初めて意味のある物になる。一条工務店が絶対とは言えないが、耐震性や家づくりの品質については安心して任せることができるのではないだろうか。

ヘーベルハウス

ヘーベルハウスは鉄骨なので一条工務店との直接比較はできない。

鉄骨系は強度のシミュレーションがしやすいので、地震に対する想定はしっかりとされている”はず”と信じている。(大丈夫かな?)

世間一般?の印象も含めて頑丈そうな家なので大丈夫だろう。
あとは大手なので施工管理等はしっかりしているはず。

ローコスト系、地元工務店

実際に自分が建てたことがないのであまり適当なことは言えないが、お金を削りすぎると品質に問題が出てくると思っている。

同じ建材を使ったとしても作業者のスキルであったり、施工品質の管理があまいと最大限の性能は引き出せない。

大手はそのへんの管理がしっかりしているイメージがある(すべてがしっかりしているは限らないが。。。)ローコスト系の不安要素はやはり家づくりの品質かなぁ。

あまりお金を掛けずに良い家を作ってくれる工務店もあるのだと思うが、それを探すことは相当な労力がかかると悟った。それに自分の住んでいる地域に意識の高そうなイケてる工務店が少ないのもあったので今回は大手HMを選択した。

まとめ

家を建てるときは皆さんいろいろと勉強されると思いますが、熊本地震の被害状況を考察したこの本は一読の価値アリです。(特に木造で家を建てる方は)

大地震に備えた家造り、工務店・HM選びをするためにもぜひ読んでいただきたい一冊でした。
マニアックな構造解析とシミュレーションなどが出てくるので、興味がない人にはあまり参考にならないかもしれないです。私はその手の計算やシミュレーションが割と好きなタイプなので「なるほどなー」と思いながら読めました。

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